社会起業家ストーリー

~八ヶ岳のふもとに高齢者のやすらぎの場所をつくりたい~ NPO法人曼荼羅祈り写仏の会 安達原 文彦さん

安達原さんの想い

NPO法人曼荼羅祈り写仏の会は、女流仏画師である安達原さんのお母様により、仏画や写仏を通して、日常生活の中に謙虚な祈りを持ち、心楽しく喜びの持てる豊かに生きていくことを目的に設立されました。

1995年に「安達原 玄 仏画美術館」を山梨県北杜市に開館したお母様につづき、安達原さん自身も住み慣れた都会を離れ、お母様とともに、美術館と老人福祉施設が融合した「八ヶ岳テルミヌスの郷」の夢を掲げ、活動を行なっています。

安達原さんのなかできっかけとなったのは、お父様が入られた老人ホームを訪ねていたころの記憶でした。施設の職員の方に得意のパソコンを教え、自身の居場所を見つけようとしていたお父様も、「いつここを出られるんだ」と会うたびにおっしゃっていたそうです。人生の最後を老人ホームで終えたお父様を思う時、安達原さんは、人生の最後の時間を、もっと生きがいをもち、もっと安らいだ気持ちで過ごしてほしいと痛切に思ったそうです。

安達原さんが描くソーシャルビジネス

安達原さんが目をつけたのは、地域の廃校でした。過疎化・少子化が進み、学校の統廃合が進められるなか、この廃校を活用することができないだろうかと、安達原さんは、各地の廃校活用の情報を集めました。しかし、多くの廃校では、観光客向けの文化施設だったり、地元住民向けの交流施設だったりと、利用者が限定されているものがほとんどです。年齢も居住地も関係なく、様々な人が集える新しいコミュニティの舞台として、廃校を活用したいと安達原さんは考えたのです。それが、安達原さんが考える、美術館と老人福祉施設が融合した「八ヶ岳テルミヌスの郷」構想です。

「八ヶ岳テルミヌスの郷」では、廃校の校舎に芸術創作活動を行なう場所や、作品を展示する場所を用意することを考えています。写仏には、高齢者の生きがい達成度をあげる効果が既に立証されているそうで、芸術に取り組むことで、高齢者の生きがい探しを支援したいと考えています。また、働くことや、農作業に触れることを通して、高齢者の社会参加にもつなげようと考えています。そして、ゆくゆくは高齢者の賃貸住宅を建設したいと、安達原さんは考えています。

高齢者が生き生きと暮らし、その家族や地域の方達が気軽に訪れることが出来る場所。ただ、顔を見に来るだけでなく、家族も楽しみに訪れる場所。新たな安らぎの場を作るため、安達原さんは、この新しいプランに向かって着実に歩みを進めています。