ファンドレイジングモデル事例2
NPO法人南アルプスファームフィールドトリップでは、2011年の東日本大震災と、それにつづく福島原発の事故を受け、自分たちに出来る支援をしたいとの思いから、福島県飯舘村の知り合いの牧場で飼われていたメスの黒毛和牛2頭を購入して引き取りました。
理事長の小野さんは、牛を飼うのははじめての経験でしたが、飯館村のシンボルである飯館牛の血統を南アルプスの地で守るため、2頭に福ちゃん島ちゃんと名付け、「までい牧場」プロジェクトをスタートさせました。
しかし、現在牛を放牧している遊休農地を、牧場として使用するための年間の地代に加え、えさ代、柵の整備、水場の確保、牛舎の建設、牛の世話をするスタッフ人件費など、これから継続して牛を飼い続けるためには、さまざまな費用がかかります。
小野さんは、までい牧場建設のためのファンドレイジングを行なううえで、以下のような工夫をしました。
小野さんは、この機会に、複数のファンドレイジングメニューにチャレンジしました。
【1】賛助会員の募集
年間3,000円の賛助会員を募集しました。ここでは、なぜ山梨の小野さんが福島の牛を育てるのか、その思いや、今後の計画や希望を、チラシ等を使ってしっかりと訴えかけました。
【2】NPO私募債の募集
牧場運営のための擬似私募債を募集しました。額面は1口10万円、償還は起債後5年で、利息は年3%に設定されています。賛助会員に比べると格段に高額ですが、小野さんは身近な人から声をかけることで、小野さんを信頼する人が私募債を購入していきました。
【3】寄付金付き商品の販売
「ジャム瓶プリン6本と送料込みで2,300円相当の商品に寄付金700円を加えたNPOを応援するセット」のように、買い物のついでに気軽に寄付できるメニューも用意しました。
「30日で3000万円を集めるファンドレイジングキャンペーン」を行なうなど、支援者に対して、ファンドレイジングを行なっていることを積極的にアピールしました。フェイスブックやメール等を通して、支援の依頼をするなかで、自身やスタッフにもファンドレイジングへの覚悟のようなもの強くなりました。
様々なアクションにより、牧場運営への資金集めに手ごたえを感じた小野さんでしたが、一方で、課題もあったそうです。
それは、寄付を集めるコストを甘く見ていたこと。賛助会員から会費を回収したり、寄付者や私募債購入者への問い合わせに対応するなど、想像以上に手間がかかったそうです。
学んだことは、アクションを起こす前に、しっかりと準備をし、体制を整えることです。セールスフォースドットコムが非営利団体向けに無償で提供しているデータベースソフトを導入するなど、小野さんは試行錯誤をしながら、ファンドレイジングのスキルを高めています。