社会起業家ストーリー

~農業の活性化で地域を元気にする~ 甲州天空かぼちゃ生産組合 廣瀬 隆さん

廣瀬さんの想い

廣瀬さんは、2012年、2013年に実施した「やまなしソーシャルビジネスプランコンテスト」にただ一人、2年連続で入賞を果たした、アイデアと実行力にあふれた社会起業家です。

廣瀬さんが2回のコンテストで発表された2つのビジネスプランは、いずれも農業に関わるものでした。

廣瀬さんの住む甲州市は、日本屈指のワイン生産地として、丘陵や山すそのいたるところでブドウが作られている地域です。国産ワインの評価が高まり、山梨県内でも活気のある地域のひとつではありますが、それでも他の地域と同様、農業の担い手は減少を続け、農地が耕作放棄されつつあります。しかし、甲府よりさらに東京に近い立地を生かし、都市と農村をつなぐことができれば、もっと地域の農業を元気に出来るのではないだろうか、その思いから、廣瀬さんは、様々なアイデアを考えていきました。

廣瀬さんのビジネスプラン

廣瀬さんは、東日本大震災の際に都市部で水や食料が不足する様を目の当たりにし、都市に住む人にとっても、水や食料の源泉となる農村とつながることが重要ではないかと考えました。グローバリゼーションに対抗する、ローカリゼーションという考え方に共鳴した廣瀬さんは、仕事を持ちながらも、休日などを活用し、農でローカリゼーションを支える人を“ローカリゼーター”と名付け、その重要性を2012年のコンテストで訴えました。そして、廣瀬さんは早速、その年には東京のNPOと連携し、個人で都市住民向けの農業体験の受け入れを行ないはじめたのです。

また、廣瀬さんが活動するNPO法人甲州元気村では、遊休化したぶどう棚を活用し、かぼちゃを「天空」にぶら下げて栽培する「天空かぼちゃ」の生産を行なっています。ぶどうは、栽培に手間と熟練の技術を要し、高齢者にとっても、新規就農者にとっても、ハードルが高い作物です。しかし、かぼちゃであれば、労力も少なく、比較的簡単に作れるため、多くの方が栽培に参加する可能性が開かれます。「天空かぼちゃ」は、そのネーミングもあって、着実に知名度を上げ、需要が高まっていますし、何よりも、山梨県の名物であるほうとうに、かぼちゃは欠かせない野菜です。山梨の新たな特産品として、さらには六次化製品で世界に売り込むためにも、この「天空かぼちゃ」の生産体制を築くことが重要と考えた廣瀬さんは、2013年のコンテストで再び、地域内外から新たな農の担い手を募り、育てていくことの重要性を訴えました。

農業を土台に地域を元気にしたい、でも、勢い込むのではなく、肩肘はらず、楽しく、自分のペースでやっていきたい。そんな思いで、廣瀬さんは着実に実績を積み上げていっています。